籠太の親父は実は様々な顔を持っている。料亭の社長、焼き鳥屋の親父、地域興しのアドバイザーもやっているし、郷土料理の研究家でもある。当然それぞれに収入が発生するから、本当の“職業”というものが自分でも分からないままずるずるここ迄来てしまった。でもこれだけは言える。焼鳥屋の親父が一番楽しい。
この前もこんなことがあった。県庁の農業間系の部署からお呼びがかり、お昼過ぎから「21世紀の特産品作り」というテーマで100名位の前で講演をして帰ってきた。そのまま店に戻り、いつものようにお店の準備をして開店したら、来店したお客さんにこう声をかけられた。「マスター!いや~世の中には似た人がいるもんだね、今日マスターにそっくりな人の講演を聞いてきたよ」。どこかの役場の職員らしかったが、なぜかそれは俺だとは最後迄言えなかった。
またこんなこともあった。自分が書いた本をお店に置いていたら、私の名前を知っている人が、其の本を見て「あれ?この人親父さんと同姓同名だね~」。この時もそれは俺が書いたと最後迄言えなかった。悲しいことに余程、あほに見えるらしい。
一時期、歴史関係の本や料理関係の本にペンネームで執筆してたら、俺が書いているんだと云っても誰も本気にしない。頭に来たのでそれ以来実名で書くようにしている。そんなこんなで焼き鳥屋の親父は忙しい、数人分の人生を生きてるような生活でいつも寝不足。お店の中で居眠りをしている親父を見たら時々は大目に見てやって下さい。ああ~眠い。