いつも来るお客さんの中に子連れでたまに来る人がいる。お父さんは会社の人達とよく来ていたがたまに子供3人がお父さんに連れられてきて、行儀よくお父さんの酒に付き合い帰ってゆく。
まだ3歳くらいの女の子に紙とペンを与えてみたら 女の子が人の絵を描き始めた。これだれ?と聞いたら「おかあさん」だと答える。
この子の絵が気になり捨てないでおいた。後でわかったことだがこの子の産まれる時にお母さんは亡くなってしまったのだそうだ。この子は見た事もないお母さんを一生懸命書いていたのかと思うと涙が出た。
友人が飲みに来てこの絵は何ですかと聞いたのでこの子のことを話したら酒を飲みながら涙も拭かずに泣いている。「ばかやろう!酒飲みながら泣くな」なんて言いながら自分も泣いている。この友人も妻とのことで悩んでいたようだがあれからどうしたのだろう。
毎晩この小さな居酒屋で様々なドラマが演じられ夜が更けてゆく。立ち入るわけでもないし、見たくなくても、様々な喜びや悲しみを見させてもらう。
深夜自宅に帰り一人で「晴耕雨読」という焼酎を飲みながら闇夜を見つめて人の幸せについて考える。そんな時間が多くなった。妻はもう寝ている。